イラン人のA氏は、日本国内で中古車販売会社(株式会社、従業員は代表者であるA氏1名のみ)を経営していましたが、リーマン・ショックによって景気全体が落ち込んだあおりを受けて売上が激減し、資金が回らなくなってしまいました。
破産申立を弁護士に依頼したときの負債総額は約5,000万円です。
会社事務所はプレハブでしたが、広い土地を借りており、敷地内には大量の古タイヤ(明らかに無価値と思われるもの)が山積みになっている状態でした。
A氏も会社も手元資金に乏しく、裁判所に収める予納金に充てられる金額は30万円程度しかありません。
このままでは申立後の破産管財人の業務が増え、予納金の額が高額になることが予想されたことから、A氏本人やその友人の業者の協力を得て、申立前までに、古タイヤの山を全て綺麗に撤去しました。
また、A氏が以前日本で経営していた会社がオーストラリアにある会社に対して損害賠償請求の訴訟を起こしており、この訴訟がいまだ継続中でした。
裁判所にこの点を事前に相談したところ、外国法人に対する訴訟についても債権の回収可能性がないか、管財人の調査事項となり、管財人の負担も考えたそれ相応の予納金の積み増し(さらに50万円程度)が必要だとの回答でした。
しかし、50万円も予納金を積み増す余裕はありません。
そこで、当該外国法人からの回収可能性については申立代理人側で調査を尽くすことを条件に破産申立を行い、A氏個人の破産申立と合わせて30万円の予納金で管財人を選任してもらうことができました。
申立代理人の方でA氏が依頼しているオーストラリアの弁護士に連絡をとり、メールで訴訟の経過と勝訴の見込みを報告してもらったところ、債権回収可能性はほとんどないとのことでしたので、その旨を調査報告書の形で裁判所に提出しました。
その他は、特に換価すべき会社財産もなく、配当なしで破産手続きは終了しました。