紛争の内容
依頼者は出版業を内容とする法人の代表者でした。近年の紙媒体出版物の販売数減少により事業継続が困難になり、借入金の返済の目途が立たなくなり、また、代表個人も法人借入の連帯保証人としての保証債務の履行は事実上不可能であり、法人・代表者個人、双方について破産手続をとることを依頼されました。
(負債総額:法人約1億円、代表者約1億円(保証債務))

交渉・調停・訴訟等の経過
小規模の企業で時折見られることですが、法人名義の預貯金と代表者個人名義の預貯金とで、長期間にわたって金銭の出入りが混然一体となっており、正確な資産状況を内容とする破産手続開始の申立てを行うことが困難でした。また、代表者は、法人の決算書の内容を把握しておらず、資産の状況、債務の発生原因等を一つ一つ紐解いていく必要がありました。
そこで、代表者から聞き取りを行いながら、資産・負債の内容を調査していき、法人名義の預貯金と代表者個人名義の預貯金との対応関係をできる限り分けていき、裁判所に破産手続開始の申立てを行いました。
法人と代表者個人との財産の内容について、裏付資料のある完全な状態での申立てを行うことはできませんでしたが、丁寧に調査を行った内容や過程等を詳細に報告書の形で提出したため、破産管財人にも裁判所にも、当該申立て内容について理解いただくことができました。

本事例の結末
法人名義・代表者個人名義で混然一体となってしまっていた財産内容について、できる限り対応関係を整理して申し立てたことにより、その後、破産管財人による調査と整理も経て、最終的には手続が無事結了し、代表者個人も免責決定を受けることができました

本事例に学ぶこと
法人破産にあたって、当然のことながら、資産・負債の内容や、その発生原因を根拠付ける資料の提出が求められます。しかし、本件のように、場合によっては、客観的な資料を提出することができない場合も出てきます。そのような場合であっても、丁寧に調査を重ね、その過程・調査結果を詳細にまとめた報告書を提出することで、法人破産・個人の破産及び免責という結果に至ることができます(もちろん、代表者には相応の協力をしていただく必要があります)。

弁護士田中智美・弁護士平栗丈嗣