医療機関である病院、クリニック、歯科医院も、経営状況が悪化すれば、他の企業と同様に破産に至る可能性があります。
医療機関の破産は、患者さんへの医療提供の継続、従業員の雇用、債権者への弁済など、多くの課題を抱えています。
そこで、今回は、病院・クリニック・歯科医院の破産でよくある問題点について、弁護士法人グリーンリーフ法律事務所が解説します。
第1破産のために初動で検討することについて
1 通電(電気)の問題
多くの病院では、患者さんの生命維持、病院の医療機器の稼働、エレベーターの利用等、電気が必要なはずです。したがって、「電気代」を支払うこと、その費用を残しておくことを念頭に置く必要があります。
2 拠点の明渡について
自社ビル(建物)であれば、管財人が売却することが多いのですぐにでる必要はないのですが、賃貸の場合は、「いつでれるか」「でるのにいくらかかるか」を見積もっておく必要があります。
特に、病院関係の医療機器や医療廃棄物は、廃棄費用・撤去費用等が高額となることが多いので、注意が必要です。
また、 医薬品の廃棄や保管にも注意を要します。
※医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
※廃棄物の処理及び清掃に関する法律
カルテ等の書類の保管にも注意を要します。方法(財産換価539頁)
カルテやレントゲン写真等は、医療法21条1項9号、医師法24条2項により5年間の保存義務があります。
3 協力人員の確保について
クリニックを閉鎖するにあたって、協力人員も必要となります。
とりわけ、経理の方は必要となります。また、入院患者等の転院までに看護師を確保したり、最低限医療体制を維持することも検討します。
第2 財産の管理について
1 在庫品
病院等が破産する場合、在庫品(医薬品、医療材料、医療消耗品など)の管理には、以下の点に注意する必要があります。
⑴法令遵守
薬事法: 医薬品の保管・管理は薬事法の規定を遵守する必要があります。特に、要指示医薬品や麻薬など、厳格な管理が求められる医薬品については、法令に則った適切な保管・管理を行う必要があります。
医療法: 医療材料や医療消耗品の保管・管理についても、医療法の規定に準拠する必要があります。
廃棄物処理法: 医療廃棄物の処理は、廃棄物処理法に基づいて適切に行う必要があります。
消防法: 危険物に該当する在庫品は、消防法に基づいた保管・管理が必要です。
⑵安全確保
品質維持: 医薬品などの品質を維持するため、適切な温度・湿度管理、光や空気からの遮断など、必要な措置を講じる必要があります。
感染防止: 感染性のある医療廃棄物などは、適切に隔離・保管し、感染拡大のリスクを最小限に抑える必要があります。
事故防止: 在庫品の保管場所における転倒・落下事故などを防止するため、整理整頓や安全対策を徹底する必要があります。
⑶ 記録
在庫品の移動や処分に関する記録を適切に作成・保管する必要があります。
基本的には、速やかに破産管財人に連携することが重要です。
2 債権関係
・診療報酬債権
保険診療をしている場合、社会保険診療報酬支払基金および国民健康保険団体連合会に対して診療報酬請求権がありますので、債権額を確認します。
・自由診療債権
基本的には診療日払いと思いますが、未回収があれば、患者さんへの請求方法を検討します。
3 機械設備・不動産等について
・医療機器はリース物件となっている場合が多いので、リース会社との賃貸借契約の内容を確認します。
・売却可能な機器は、買取り専門業者で見積を取得することもあります
・不動産は、任意売却可能かどうか検討します
4 その他
・許認可関係
※病院・診療所の開設者は、その病院・診療所を廃止したときは、10日以内に都道府県知事に届け出なければなりません(医療法91条)。
・破産手続終了後の問題
※破産手続終了後のカルテの保存義務について。管財人が、破産財団から費用を支出して保管することが多いです。
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、多数の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
社の破産においても、専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。
危機時期にも適切なアドバイスができるかと存じますので、まずは、一度お気軽にご相談ください。