農業、牧畜業に携わる会社、個人の破産申立をする場合、作物・家畜という生き物を扱うのですから、その特徴に応じた注意をする必要があります。必要な肥料・飼料の確保、電力の確保、肥料・飼料の保管・盗難防止など特徴的な点について述べてみました。

農業、牧畜業の破産手続きの特徴・注意点

1 破産申立の特徴

  農業、牧畜業の場合、生育中の作物、家畜などがあるのですから、これらを適正な値段で換価するために、あるいは売却できる状態で破産管財人に引き渡すために、注意しておくことがいくつかあります。

  これらの注意点について述べてみたいと思います。

2 破産申立の注意点

 ⑴ 必要な肥料、飼料の確保

   作物、家畜は生きているのですから、1日たりとも肥料、飼料を欠かすことはできません。

  ア 必要量の見積もり

   ① 必要な資材の特定

・ 作物の種類に応じて、必要な肥料の種類と量を考えます。

・ 家畜の種類、頭数、健康状態に基づいて、必要な飼料の種類と量を考えます。

   ② 使用期間の設定

生育、飼育を継続するために必要な期間を考え、それに応じた肥料、飼料の必要量を算出します。

  イ 在庫の確認

   ① 破産申立時点で保有している肥料や飼料の在庫量を確認し、また、有効期限や品質を確認し、利用可能なものを特定します。

   ② 在庫量と必要量を比較し、不足分を明確化します。

  ウ 財務状況との調整

手元にある資産を考慮し、最小限のコストで確保できる量を設定します。

  エ 価格や納期を比較し、新規調達先を探すなどしてコスト削減を図ります。

    地域の農業協同組合や牧場関連団体に支援を依頼することも有効です。

  オ 補助金・支援制度の活用

可能であれば、農林水産省や自治体が提供する補助金や支援プログラムを調査し、活用します。

  カ 家畜頭数の調整

家畜の過剰分を市場で早期売却し、必要な飼料量を減少させることで対応する場合もあります。

 ⑵ 電力契約の確認

   作物、家畜を育てるとき、多くの場合、電力が必須になります。

  ア 現在の電力会社との契約内容を確認し、供給停止条件や滞納状況を把握します。

電気料金の滞納がある場合、破産申立前に支払うことで供給停止を防ぎます。

  イ 維持すべき電力の範囲の特定

作物や家畜の生育に必要な最低限の電力を明確にし、維持すべき設備を特定します。

例.冷却設備、温室の加温、給水ポンプ、照明など。

  ウ 電力会社への相談

電力会社に破産申立の予定を説明し、供給停止回避の可能性を確認します。必要に応じて分割払いなどの条件交渉を行います。

  エ 代替手段の検討

電力供給が困難な場合に備え、発電機やバッテリーなどの代替手段を事前に調査します。

 ⑶ 従業員の状況把握

   作物、家畜を育て、破産管財人に引き渡すまで、従業員の協力は欠かせません。

  ア 従業員リストの作成

雇用している従業員のリストを作成し、役割、給与、契約条件を確認します。

専門的な技術を持つ従業員(例: 家畜管理や農作業の熟練者)を特定します。

  イ 従業員の優先順位付け

作物の手入れや家畜の世話に不可欠な従業員を特定し、優先的に確保する計画を立てます。

  ウ 従業員の意向確認

破産の状況を説明し、継続勤務の意向を確認します。懸念や不安がある場合は、率直に状況を説明します。

  エ 雇用契約の見直し

破産手続き中の一時的な対応として、短期契約や臨時雇用を検討します。特に収穫や特定の作業に必要な人員については、期間を限定した雇用契約を締結します。

  オ 外部リソースの活用

   ① 人材派遣会社の利用

農業・牧畜分野に特化した人材派遣会社を活用して、短期間での労働力確保を図ります。

   ② 地域コミュニティへの依頼

地域の農業協同組合や地元団体に協力を依頼し、短期間の人材支援やボランティアを募ります。

 ⑷ 肥料、飼料の保管、盗難防止

  ア 財産目録の作成

飼料、肥料、農薬などの在庫を正確に把握し、リスト化します。

数量、種類、保管場所、状態を詳細に記録し、写真撮影などで証拠を残します。

  イ 保管場所の確認

保管場所が適切であるか(盗難防止の観点から鍵がかかる、立ち入りが制限されているなど)確認します。

必要であれば保管場所を変更します。

  ウ 盗難防止策

   ① 鍵の管理

倉庫や保管場所の鍵を厳重に管理し、関係者以外の立ち入りを禁止します。

破産申立後は、管財人が鍵を管理する場合があるため、事前に確認しておきます。

   ② 防犯設備の導入

倉庫や保管場所に防犯カメラや警報装置を設置することで、盗難の抑止効果を高めます。

夜間の見回りや監視体制を強化することも検討します。

   ③  関係者への通知

破産手続き中であることを従業員や関係者に説明し、不審な行動を未然に防ぎます。

  エ 適切な保管方法

   ① 肥料・農薬の保管

農薬は法令に基づき、安全な場所に保管し、盗難や誤用を防ぎます。

農薬取締法に従い、施錠可能な専用の保管庫を使用します。

肥料については、屋外に保管する場合、雨や風による劣化を防ぐためのカバーを使用します。

   ② 飼料の保管

湿気や害虫の影響を受けやすい飼料は、防湿措置や密閉容器の使用を徹底します。

長期保存が難しい場合、必要量のみを維持し、不要な在庫は早期に売却します。

   ③ 適切な処分の計画

使用期限が近い農薬や飼料は、適切に使用または処分します。

売却可能な資産は、適切なタイミングで現金化する計画を立てます。

  オ 法令遵守

農薬や危険物を扱う場合、関連法令(農薬取締法、消防法など)を遵守し、破産手続中であっても違法状態に陥らないよう注意します。

 ⑸ 販売方法の検討

作物、家畜について、破産開始決定後の破産管財人による売却を待つことができないときは、破産申立前の売却を検討しなければなりません。

  ア 直接販売

家畜の場合、地域の家畜市場や競りに出荷し、速やかに売却します。作物の場合、農協(JA)を通じて市場に出荷したり、地元の直売所やスーパーと直接交渉し、作物を販売します。

  イ インターネット販売

「ポケットマルシェ」などの農業専用のオンラインマーケットを活用して販売します。家畜専用のオンライン競り市場を活用することも可能なようです。

  ウ 公的機関の支援

農林水産省や自治体で、作物や家畜の販売支援を行う窓口に相談し、適切なルートを紹介してもらいます。振興団体に相談し、地元消費者やバイヤーに直接アプローチします。

法人破産の流れ

1 ご相談

会社の社長などにご来所いただき、弁護士が、会社の経営状態、資産・負債の内容をお聞きするとともに、どのような手続を取るのがよいのかのアドバイスを行います。

2 お打ち合わせ①

必要書類・資料をお持ちいただき、弁護士、法務スタッフが、社長、経理担当者の方などと詳しい打合せを行います。また、裁判所に提出する委任状、当事務所にご依頼いただく場合の委任契約書を作成します。

資料の例:貸借対照表・損益計算書、資産目録、債権者・債務者一覧表、不動産登記簿謄本、賃貸借契約書、預貯金通帳、法人印鑑・ゴム印など

3 現地の調査・従業員に対する説明

・現地調査

本社、営業所、工場などに出向き、現地の状況を調査するとともに、場合によっては弁護士が受任した旨の公示書を貼ります。

・従業員への説明

従業員に対して、破産申立てに至った理由を説明し、在庫などの資産や帳簿類の保全への協力、破産管財人への協力を要請します。

給与、健康保険の切り替え、年金の処理、失業保険受給のための離職票の発行などについても、きちんと説明します。

4 受任通知の発送

以後は、弁護士が債権者との対応をすることになります。

5 お打ち合わせ②

ご依頼を受けた後、弁護士が裁判所に提出する破産申立書を作成しますが、その中で出てきた不明点の聞き取り、不足・不十分な書類の補充などのための打合せを行います。

6 賃貸物件の明け渡し

賃借物件がある場合、状況によって破産開始決定前に明渡しを行います。

7 裁判所に対する破産申立書の提出

裁判所に対して、破産申立書を提出します。

※ なお、上記3~6を行わず、事前に裁判所と相談したうえで、申立書を裁判所に提出する場合もあります(密行型)。

  上記3~6を行うのは、オープン型と言って、すでに支払いが滞納していたり、債権者が来ていたりする等の場合です。

また、当然、事案に応じて、上記3~6やそのほかの対応を、上記の順序と異なる順序で行うこともあります。

8 裁判官との面接

会社の社長、経理担当者などと弁護士が裁判所に行き、破産に至った経過、資産・負債の状況、従業員、債権者、賃借物件の状況、その他の問題点について、裁判官から質問を受けます。

この時に、裁判所に納める予納金の額も決定されます。

※開始前の面接が行われない場合もあります。

9 破産開始決定

破産開始決定がされ、破産管財人が選任されます(裁判所が選任した弁護士が破産管財人になります)。

10 破産管財人との面接

会社の社長、経理担当者などと弁護士が、破産管財人の法律事務所に行き、破産管財人から質問を受けます。

11 資産の処分・配当

破産管財人のもとで、会社の資産の換価、売掛金の回収が行われ、これを債権者に配当します。会社が、一部の債権者に不公平な弁済を行っている場合は、破産管財人がこれを取り戻します。

12 債権者集会

裁判所で債権者集会が行われ、破産管財人が、破産に至った経過、資産・負債の状況、配当の状況などを説明します。ただ、出席して説明を聞いてもあまり意味がないと考える債権者の方が多く、債権者は出席しないか、数名の出席の場合が多い印象です。

配当が終了していない場合は、さらに債権者集会が開かれる場合もあります。

配当するほどの財産がない場合、配当をしないで破産手続が終結することがあります。

13 破産終結決定

これによって、破産手続きは終了し、会社は解散となります。

※ 破産申立書を提出してから、破産終結決定までにかかる時間は、不動産の処分や売掛金の回収にかかる時間、不公平な弁済の有無、配当の有無などによって異なりますが、一般的には6ヶ月~2年程度です。

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所の特徴

開設以来、数多くの法人破産申立・破産管財事件・代表者破産に対応してきた弁護士法人グリーンリーフ法律事務所には、破産手続に精通した弁護士が数多く在籍し、また、法人破産専門チームも設置しています。

このように、弁護士法人グリーンリーフ法律事務所・法人破産専門チームの弁護士は、破産手続や代表者保証に関する法律相談を日々研究しておりますので、法人破産や代表者の債務整理に関して、自信を持って対応できます。

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弁護士法人グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、多数の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
社の破産においても、専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。
危機時期にも適切なアドバイスができるかと存じますので、まずは、一度お気軽にご相談ください。