
製造業とは
製造業とは、有機または無機の物質に物理的、化学的変化を加えて新たな製品を製造し、これを卸売する事業のことです。
食料品、飲料、繊維、木材、家具、紙、化学薬品、石油製品、プラスチック製品、ゴム製品、鉄鋼、電子部品、特殊機械等、その対象は多岐に渡り、言うまでもなく、我が国における基幹産業の一大分野です。
製造業の破産手続の特徴・注意点

1 初動対応
(1)材料、在庫商品、製造機械等の保全と権利関係の確認
製造業を営んでいる会社では、多数の材料や在庫商品、製造機械等を抱えていることがほとんどです。
これらの物品が会社の所有するものであるならば、破産手続において、債権者への配当原資を構成する貴重な財産となります。
そこで、これらの物品の費目・数量・所在場所を速やかに把握するとともに、営業停止直後の混乱の中で散逸することのないよう、鍵のかかる場所でしっかりと保管するなどの保全措置をとります。
また、会社の所有するものではない物、例えば、リース品や取引先から預かっているに過ぎない物については、当然ながら配当原資とすることはできませんので、できるだけ早くリース債権者や取引先(所有者)に返還していきます。
(2)通電(電気)の確保
冷凍・冷蔵しておかないと傷んでしまう食料品等の在庫商品がある場合は、後に適正価格で売却するためにも、品質を維持するため、引き続き冷凍庫・冷蔵庫で保管しておく必要があります。
そこで、このような場合は、営業を停止した後も電気の利用契約を維持し、工場や倉庫内の通電を確保しておきます。
また、残務処理や中の物品の査定・売却のためなど、中に立ち入る必要がある場合に工場や倉庫の電動シャッターが開かないと困ってしまいますし、会社財産の盗難や債権者による違法な持ち出しを防ぐために、セキュリティシステムを維持する必要がある場合もあります。こうした場合にも電気が必要です。
(3)協力してくれる元従業員の確保
破産申立てのためには、会社の財務状況や経理に精通している方、従業員の雇用や賃金の支払いなど労務の関係に詳しい方、さらに、材料や在庫商品を売却・換価する作業がある場合には、業界の事情に精通し適切な販売ルートと繋がりのある方の協力が必須です。
これらを全て代表者が一手に担っていたという場合は別ですが、そうでなければ、いったん解雇した元従業員の中から手続に協力してくれる人材(経理や人事の担当者等)を確保しておく必要があります。
2 会社財産の換価

(1)材料や在庫商品の換価
消費期限・賞味期限のある食料品、使用期限のある製品については、早期に売却のスケジュールを立てる必要があります。特に、精肉や青果などの生鮮食品の場合は一刻を争いますので、元従業員の協力も得て、迅速に売却します。
また、アパレル商品は、季節や流行の関係上、一定の時期までに換価しなければ大幅に値段が下がってしまいますので、売却のタイミングが重要です。
在庫が大量にある場合には、バラバラに引き取ってもらうよりも、全てを一括して引き取ってもらった方が売りやすいということもありますので、値段と相談のうえ、販売方法を検討していきます。
大切なことは、売り急ぐあまり、廉価販売にならないよう注意することで、複数社の相見積もりを取って、最も高い値をつけたところに売るようにします。
※集合動産譲渡担保に注意
製造業の場合、倉庫内に存在する在庫商品を対象として集合動産譲渡担保が設定されていることがありますので、設定契約書、対象物の所在、動産譲渡登記の内容等を確認します。
ある債権者が対抗要件(占有改定、動産譲渡登記)を備えている場合には、対象となる在庫商品の処遇につき、代理人弁護士(ないし破産管財人)と当該債権者との間で協議し、被担保債権を弁済したうえで対象物を受け戻すなどの対応をとります。
※動産売買先取特権を主張された場合
材料等の仕入れ先から動産売買先取特権が主張される場合があります。
しかしながら、動産売買先取特権には、対象物を直接支配する権利はなく、その権利を実現するためには、債権者は裁判所の動産競売許可決定を得たうえで対象物を差し押さえる必要があります。
このため、上記の差押えがなされるまでの間は、当該債権者に対象物を引き渡す必要はありません(ただし、当該債権者は、対象物を売却した後の売買代金に代位できるため、その点は注意が必要)。
(2)機械設備等の換価
特殊な機械設備や工具類は、販路が限られるものの、高値で売却できる可能性があります。
工場や倉庫の中に多数の機械設備がある場合、売れ残りを避けるため、工場ごと一体として売却する方法もあります。
※所有権留保・譲渡担保に注意
大型の機械設備の場合はこれらが設定されている可能性があるので、第三者対抗要件の具備と併せて、その有無を確認しておく必要があります。
(3)工場等の不動産の換価
会社所有の不動産(抵当権等が設定されていない)がある場合、これを適正価格で売却することができれば、配当原資を大幅に増やすことができます。
ただし、業種によっては、売却にあたり、薬品等の化学物質や危険物の除去、産業廃棄物の処理が必要となる場合があります。
また、不動産が工業団地内に所在する場合には、中小企業等協同組合法に基づく事業協同組合が設立され、定款等によって不動産の売却につき組合の承諾が必要になる旨が定められている可能性があるため、このような制限がないかどうか確認します。
3 売掛金の回収

会社が有している売掛金債権も貴重な会社財産を構成するものとなるので、弁済期の到来しているものについては積極的に回収していきます。
この時、請求先から、検収費用の控除や、不良品が混じっていたことによる損害賠償請求権等との相殺を主張されることがありますが、それらの主張が破産法の定める相殺禁止に当たらないか検討し、慎重に対応していきます。
また、仕掛途中の業務がある場合には、それまでに完成させた出来高部分に対する報酬を請求できないかどうか、検討します。
4 事業継続の可否
営業を停止した後は、会社として事業を継続してはならないのが原則です。
しかしながら、仕掛業務があり、それを完成させれば確実に売掛金の回収が見込めるといった例外的な場合には、その部分に限定して事業を継続することが認められる場合があります。
法人破産の流れ

1 ご相談
会社の社長などにご来所いただき、弁護士が、会社の経営状態、資産・負債の内容をお聞きするとともに、どのような手続を取るのがよいのかのアドバイスを行います。
2 お打ち合わせ①
必要書類・資料をお持ちいただき、弁護士、法務スタッフが、社長、経理担当者の方などと詳しい打合せを行います。また、裁判所に提出する委任状、当事務所にご依頼いただく場合の委任契約書を作成します。
資料の例:貸借対照表・損益計算書、資産目録、債権者・債務者一覧表、不動産登記簿謄本、賃貸借契約書、預貯金通帳、法人印鑑・ゴム印など
3 現地の調査・従業員に対する説明
・現地調査
本社、営業所、工場などに出向き、現地の状況を調査するとともに、場合によっては弁護士が受任した旨の公示書を貼ります。
・従業員への説明
従業員に対して、破産申立てに至った理由を説明し、在庫などの資産や帳簿類の保全への協力、破産管財人への協力を要請します。
給与、健康保険の切り替え、年金の処理、失業保険受給のための離職票の発行などについても、きちんと説明します。
4 受任通知の発送
以後は、弁護士が債権者との対応をすることになります。
5 お打ち合わせ②
ご依頼を受けた後、弁護士が裁判所に提出する破産申立書を作成しますが、その中で出てきた不明点の聞き取り、不足・不十分な書類の補充などのための打合せを行います。
6 賃貸物件の明け渡し
賃借物件がある場合、状況によって破産開始決定前に明渡しを行います。
7 裁判所に対する破産申立書の提出
裁判所に対して、破産申立書を提出します。
※ なお、上記3~6を行わず、事前に裁判所と相談したうえで、申立書を裁判所に提出する場合もあります(密行型)。
上記3~6を行うのは、オープン型と言って、すでに支払いが滞納していたり、債権者が来ていたりする等の場合です。
また、当然、事案に応じて、上記3~6やそのほかの対応を、上記の順序と異なる順序で行うこともあります。
8 裁判官との面接
会社の社長、経理担当者などと弁護士が裁判所に行き、破産に至った経過、資産・負債の状況、従業員、債権者、賃借物件の状況、その他の問題点について、裁判官から質問を受けます。
この時に、裁判所に納める予納金の額も決定されます。
※開始前の面接が行われない場合もあります。
9 破産開始決定
破産開始決定がされ、破産管財人が選任されます(裁判所が選任した弁護士が破産管財人になります)。
10 破産管財人との面接
会社の社長、経理担当者などと弁護士が、破産管財人の法律事務所に行き、破産管財人から質問を受けます。
11 資産の処分・配当
破産管財人のもとで、会社の資産の換価、売掛金の回収が行われ、これを債権者に配当します。会社が、一部の債権者に不公平な弁済を行っている場合は、破産管財人がこれを取り戻します。
12 債権者集会
裁判所で債権者集会が行われ、破産管財人が、破産に至った経過、資産・負債の状況、配当の状況などを説明します。ただ、出席して説明を聞いてもあまり意味がないと考える債権者の方が多く、債権者は出席しないか、数名の出席の場合が多い印象です。
配当が終了していない場合は、さらに債権者集会が開かれる場合もあります。
配当するほどの財産がない場合、配当をしないで破産手続が終結することがあります。
13 破産終結決定
これによって、破産手続きは終了し、会社は解散となります。
※ 破産申立書を提出してから、破産終結決定までにかかる時間は、不動産の処分や売掛金の回収にかかる時間、不公平な弁済の有無、配当の有無などによって異なりますが、一般的には6ヶ月~2年程度です。
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所の特徴

開設以来、数多くの法人破産申立・破産管財事件・代表者破産に対応してきた弁護士法人グリーンリーフ法律事務所には、破産手続に精通した弁護士が数多く在籍し、また、法人破産専門チームも設置しています。
このように、弁護士法人グリーンリーフ法律事務所・法人破産専門チームの弁護士は、破産手続や代表者保証に関する法律相談を日々研究しておりますので、法人破産や代表者の債務整理に関して、自信を持って対応できます。
法人についてお悩みの経営者・代表者の方は、ぜひ、当事務所にご相談ください。
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、多数の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
社の破産においても、専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。
危機時期にも適切なアドバイスができるかと存じますので、まずは、一度お気軽にご相談ください。