交渉・調停・訴訟などの経過
1 受任前
夫が急死。配偶者は有限会社取締役の名目取締役であったところ、夫の会社の残務整理の方法として、顧問税理士に相談したところ、そのためには代表者変更が必要として、司法書士に相談、依頼。
司法書士への依頼内容は、
①定款変更によって、一人取締役会社とした。
②亡夫の残した株式を相続した配偶者が定款変更の株主総会を開催し、同決議を経、同決議書を作成した(下記2の時点で判明)。
2 相談
税理士を伴い、債務超過会社の今後の手続きについて、債務整理相談。
法人は自己破産申し立て依頼を受ける。
3 亡夫の債務調査
他方、個人企業の法人であるため、亡夫の保証債務がある可能性を疑い、熟慮期間の伸長手続きを申立て、信用情報機関調査。債務超過であれば、配偶者、子相続人は相続放棄する方針。
調査後、信金の数十万円のみ(配偶者負担可能)。積極財産として不動産(共有持ち分あり。亡父の共同相続人が共有であるが、自宅を担保にとられないため(守るため)に単独名義にしなかった可能性あり))があるため、相続人らは相続を承認することとした。
なお、上記の定款変更のための相続した株主権行使により、法定単純承認と評価される事例である。
4 法人破産申立て(管財事件)
決算書上、未回収の売掛あるも、相手先所在不明であり、代理人限りでの調査を報告。
法人管財手続中、法人代表者(未亡人)宛の郵便物も管財人転送される。
裁判所に、法人代表者は破産していないこと、転送郵便局宛に確認など対応依頼。
管財人に対しても、法人代表者は破産していないため、転送郵便物は回避せず、返還されるよう連絡した。しかし、管財人は、法人の調査のため、法人代表者個人宛郵便物を調査することに協力されたいと返答。
代表者は不満を漏らす(法的には代表者が正当と考える)が、財産隠匿などもないことを証明になるからとなだめ、消極的に協力を取り付ける。
その後、裁判所から、法人代表者個人名の郵便物転送しないよう嘱託先に指示確認した模様(その旨連絡あり)。その後転送なし。
本事例の結末
売り掛けも回収不能として、第1回集会で異時廃止。
本事例に学ぶこと
法人破産事件としては、特に特殊ではない案件。
法人経営に関与していない名目的取締役が、顧問税理士に相談したが、当事務所の債務整理相談に同席した税理士は、会社法をよく勉強しているようだが、会社清算と、債務超過による破産的清算の破産制度の知識に乏しい。
紹介された司法書士も、本件全容の相談を受けておらず、単に、有限会社の単独取締役として、存命取締役を代表者とする手段を選択したに過ぎない。
死亡代表者の負債が僅少であったので、相続人妻子の破産を連鎖しなかったが、十分注意を要する事案であった。
同様の事例では、特に注意すべきと再認識した。