メーカーから仕入れた商品を企業(小売業)へ販売する卸売業、及び、卸売業から仕入れた商品を消費者へ販売する小売業の破産手続について解説をいたします。

卸売業・小売業の破産手続の特徴・注意点

1 電気を通電させておく必要があるかの検討

  倉庫のシャッターを開けたり、財産を換価するために機械の稼働を確認したり、セキュリティシステムを作動させるために、事業を停止させる場合であっても、通電をさせておく必要があるかを検討します。冷蔵の食品を保管している場合は、在庫や製品の保存のために通電が必要となります。

2 倉庫の明渡時期の検討

  借りている倉庫の場合、破産手続開始後の賃料を支払う必要が生じますので、早期の引き渡しが必要なのですが、在庫品の処分もしないといけませんので、適切な明渡時期を検討します。

3 フォークリフト等を運転できる従業員の確保

  破産管財人の監督の下、在庫品の換価や処分のために、フォークリフト等を使って作業をすることがありますので、運転できる作業員を確保する必要があります。

4 在庫品の売却方法の検討

  裁判所の選任する破産管財人が在庫品を売却しますので、在庫品の売却先や売却方法を検討し、破産管財人が速やかに売却できるように情報を伝えます。

5 破産管財業務に協力してくれる元従業員の存在を管財人に伝える。

  商品の販売ルート、取引先との従前の関係等、担当者であった元従業員の協力を得なければ、破産管財人による財産の把握や換価に支障が出る場合もありますので、協力してくれる従業員の存在を破産管財人に伝えられるように準備します。

6 販売の適切な時期を破産管財人に伝える。

  消費期限・賞味期限のある商品、使用期限等のある商品、季節物の衣料品等一定の時期までに換価しなければ価値が下落する商品がありますので、破産管財人にその情報を伝えます。

7 売掛先の情報を破産管財人に伝える。

  少額かつ多数の購入者がいる場合もあり、その場合は、破産管財人による換価業務に相当な時間と手間がかかりますので、売掛先の情報を正確に伝える必要があります。また、破産管財人は、早期かつ効率的な回収のために、売掛先の支払いの可否、支払拒否の理由等をみて、訴訟提起の要否を速やかに判断する必要がありますので、売掛金の回収に支障のある売掛先の情報は、破産管財人に伝える必要があります。

8 海外取引先がある場合は、破産者の保有する銀行預金口座を確保しておく。

  破産管財人が売掛金を回収する際、破産管財人名義の口座への入金を依頼するのが通常ですが、海外取引先に破産管財人名義の口座への入金を依頼することが困難となるケースがありますので、破産者の保有する銀行預金口座を確保しておく必要があります。

9 変電設備、化学物質等危険物、産業廃棄物について

破産管財人はこれらの有無を確認し、存在が確認された場合には、処分方法を検討する必要がありますので、情報を提供します。

10 公営市場の場合

   公営市場の場合は、仲間取引等の市場内取引をしているかどうかが、破産管財人の業務に影響することがありますので、情報を提供します。

11 業界特有の組合に加入している場合

   組合に加入している場合、貸付を受けていたり、出資をしていることがあり、これらも破産管財人の業務に影響することがありますので、情報を提供します。

12 破産者の商標登録について

   衣料品関係等を扱う場合は、ブランド名等を商標登録している場合がありますので、破産管財人に情報を提供します。

13 クレジット契約における営業保証金について

   クレジット契約を利用している場合、クレジット会社に対して営業保証金を支払っていることがあり、破産管財人によって回収が可能となる可能性がありますので、情報を提供します。

法人破産の流れ

1 ご相談

会社の社長などにご来所いただき、弁護士が、会社の経営状態、資産・負債の内容をお聞きするとともに、どのような手続を取るのがよいのかのアドバイスを行います。

2 お打ち合わせ①

必要書類・資料をお持ちいただき、弁護士、法務スタッフが、社長、経理担当者の方などと詳しい打合せを行います。また、裁判所に提出する委任状、当事務所にご依頼いただく場合の委任契約書を作成します。

資料の例:貸借対照表・損益計算書、資産目録、債権者・債務者一覧表、不動産登記簿謄本、賃貸借契約書、預貯金通帳、法人印鑑・ゴム印など

3 現地の調査・従業員に対する説明

・現地調査

本社、営業所、工場などに出向き、現地の状況を調査するとともに、場合によっては弁護士が受任した旨の公示書を貼ります。

・従業員への説明

従業員に対して、破産申立てに至った理由を説明し、在庫などの資産や帳簿類の保全への協力、破産管財人への協力を要請します。

給与、健康保険の切り替え、年金の処理、失業保険受給のための離職票の発行などについても、きちんと説明します。

4 受任通知の発送

以後は、弁護士が債権者との対応をすることになります。

5 お打ち合わせ②

ご依頼を受けた後、弁護士が裁判所に提出する破産申立書を作成しますが、その中で出てきた不明点の聞き取り、不足・不十分な書類の補充などのための打合せを行います。

6 賃貸物件の明け渡し

賃借物件がある場合、状況によって破産開始決定前に明渡しを行います。

7 裁判所に対する破産申立書の提出

裁判所に対して、破産申立書を提出します。

※ なお、上記3~6を行わず、事前に裁判所と相談したうえで、申立書を裁判所に提出する場合もあります(密行型)。

  上記3~6を行うのは、オープン型と言って、すでに支払いが滞納していたり、債権者が来ていたりする等の場合です。

また、当然、事案に応じて、上記3~6やそのほかの対応を、上記の順序と異なる順序で行うこともあります。

8 裁判官との面接

会社の社長、経理担当者などと弁護士が裁判所に行き、破産に至った経過、資産・負債の状況、従業員、債権者、賃借物件の状況、その他の問題点について、裁判官から質問を受けます。

この時に、裁判所に納める予納金の額も決定されます。

※開始前の面接が行われない場合もあります。

9 破産開始決定

破産開始決定がされ、破産管財人が選任されます(裁判所が選任した弁護士が破産管財人になります)。

10 破産管財人との面接

会社の社長、経理担当者などと弁護士が、破産管財人の法律事務所に行き、破産管財人から質問を受けます。

11 資産の処分・配当

破産管財人のもとで、会社の資産の換価、売掛金の回収が行われ、これを債権者に配当します。会社が、一部の債権者に不公平な弁済を行っている場合は、破産管財人がこれを取り戻します。

12 債権者集会

裁判所で債権者集会が行われ、破産管財人が、破産に至った経過、資産・負債の状況、配当の状況などを説明します。ただ、出席して説明を聞いてもあまり意味がないと考える債権者の方が多く、債権者は出席しないか、数名の出席の場合が多い印象です。

配当が終了していない場合は、さらに債権者集会が開かれる場合もあります。

配当するほどの財産がない場合、配当をしないで破産手続が終結することがあります。

13 破産終結決定

これによって、破産手続きは終了し、会社は解散となります。

※ 破産申立書を提出してから、破産終結決定までにかかる時間は、不動産の処分や売掛金の回収にかかる時間、不公平な弁済の有無、配当の有無などによって異なりますが、一般的には6ヶ月~2年程度です。

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所の特徴

開設以来、数多くの法人破産申立・破産管財事件・代表者破産に対応してきた弁護士法人グリーンリーフ法律事務所には、破産手続に精通した弁護士が数多く在籍し、また、法人破産専門チームも設置しています。

このように、弁護士法人グリーンリーフ法律事務所・法人破産専門チームの弁護士は、破産手続や代表者保証に関する法律相談を日々研究しておりますので、法人破産や代表者の債務整理に関して、自信を持って対応できます。

法人についてお悩みの経営者・代表者の方は、ぜひ、当事務所にご相談ください。

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、多数の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
社の破産においても、専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。
危機時期にも適切なアドバイスができるかと存じますので、まずは、一度お気軽にご相談ください。