理美容業

理美容業とは、「理容業」と「美容業」に分かれます。

「理容業」とは、不特定又は多数の人を対象として、頭髪の刈込、顔そり等の方法により、用紙を整える行為を業として行うことをいいます。

「美容業」とは、パーマネントウェーブ、結髪、化粧等の方法により、用紙を美しくすることを業として行うことをいいます。

理容業も美容業も、資格をもった「理容師」「美容師」でなければ、「理容」や「美容」を業として行うことはできません。

ここでは、理容業や美容業を営んでいる方が破産手続きをする際に注意すべきことや、特徴的な点について解説いたします。

理美容業の破産手続の特徴・注意点

破産手続による免許への影響

破産手続は、会社を整理したり、個人の方であれば借金の支払いの責任を免除されることを目的として行われます(もっとも、個人の方の場合、免責が不許可となり借金の責任が免除されないこともあります)。

このように、大きなメリットがある一方で、破産手続を行うことで一定の資格や職業は制限されることがあります。例えば、弁護士や司法書士などの士業の一部や、警備員や探偵業といった職業も制限がされます。

破産手続を行う場合には、こうした資格制限などのデメリットにも注意を払う必要があります。

そこで、理容師法や美容師法をみると、理容師や美容師の免許は、破産したこと自体をもって欠格事由としておりません。

つまり。破産をしたからといって、理容師や美容師としての資格制限を受けるわけではありません。

届出の必要性

このように、資格制限自体は受けませんが、理美容業を行っている方が破産手続をする際には、行政への届出を行う必要があります。

理容師法と美容師法では、「理容所・美容所の開設者は、その理美容所を廃止したときは、すみやかに都道府県知事に届け出なければならないとしています。

仮に、こうした届け出をしなかった場合には、30万円以下の罰金という罰則がありますので、注意が必要です。

原状回復の必要性

理容業や美容業は、シャンプー台の設置のために水道設備を特別に手配する必要があるなど、オフィスをするために部屋を借りている場合と異なり、理容業・美容業を行うための改造や改修を行っている場合があります。

賃貸物件の場合、破産手続を行うとオーナーへその物件を返却する必要があります。

もちろん、その物件が賃貸でない場合には、原状回復などは問題となりませんが、賃貸物件である場合には、物件の返却の際に原状回復義務が生じます。

こうした原状回復を行う場合には、多額の費用が掛かることが通常です。

まして、理容業・美容業の場合、大掛かりな改修工事を行っていることもあることから、通常よりも大きな金額となるという特徴があります。

破産手続を行うための準備の終盤で、こうした多額の原状回復費用を急に捻出することは困難です。そのため、なるべく早い段階で原状回復費用の見積もりを行い、その捻出を考える必要があります。

また、破産手続を行う場合、財産をいたずらに散逸することは認められていません。

例えば、A会社での工事では1000万円の費用がかかり、B会社やC会社での工事では500万円ですむのであれば、B会社やC会社で工事を行うべきです。

このように、工事費用の相見積もりをとることも重要です。

他にも、居抜き物件として次のテナントに引き継ぐことができるのであれば、原状回復費用を大幅に削減できる可能性があります。

こうした居ぬきでの引き継ぎができないかを考えることも有効です。

また、原状回復をスムーズにすすめるためには、事前に返却のスケジュールを大まかでもよいので確認しておくと無用なトラブルを避けながら破産手続の準備をすることができます。

リース物件の処理

理容業、美容業を営んでいる場合、シャンプー台などの設置のための改修工事もそうですが、シャンプー台自体をリースで借りていることが多いです。シャンプー台以外にも、様々な設備をリース契約していることが考えられます。

こうしたリース物件は、破産手続を行うなかで、基本的には返却する必要があります。

もっとも、たとえばリース契約が満了していたり、引き上げるだけの価値がないとリース会社が判断した場合は、リース会社が所有権放棄をすることも考えられます。

リース物件の引き上げのタイミングや、その方法については、個別具体的な事情に照らして判断すべきですから、破産手続を一緒に行う弁護士と相談して行うべきです。

業務委託契約の処理

理容業、美容業の場合、基本的には個人のお客様との間のやり取りが多く、取引先の業者がたくさんいたり、しかかりの現場があるということは少ないと思います。

しかし、理容師、美容師として働いている方との間の契約関係の処理が問題になります。

理容師、美容師として働いている方との契約は雇用ではなく業務委託であることが多いと思います。

そこで、こうした業務委託契約の処理が問題となります。

業務委託契約は、雇用契約とは異なります。

雇用契約ほど強い拘束力があるわけではありませんが、理容師や美容師として働いている方との契約関係を適切に処理する必要があります。

まとめ

このように、理容業や美容業を営んでいる方が破産する場合には、特有の問題や注意すべき点があります。

これらをしっかりとケアしたうえで破産手続を行う必要があります。

ですが、その方の置かれている状況によって、どういった方法をいつ行うべきかは本当に千差万別ですので、弁護士と一緒に相談しながら行うべきです。

法人破産の流れ

ここまで理容業・美容業の特有の注意点などについて解説しました。

ここからは、法人破産全般に共通することについて解説いたします。

1 ご相談

事業主の方などにご来所いただき、弁護士が、会社の経営状態、資産・負債の内容をお聞きするとともに、どのような手続を取るのがよいのかのアドバイスを行います。

2 お打ち合わせ①

必要書類・資料をお持ちいただき、弁護士、法務スタッフが、社長、経理担当者の方などと詳しい打合せを行います。また、裁判所に提出する委任状、当事務所にご依頼いただく場合の委任契約書を作成します。

資料の例:貸借対照表・損益計算書、資産目録、債権者・債務者一覧表、不動産登記簿謄本、賃貸借契約書、預貯金通帳、法人印鑑・ゴム印など

3 現地の調査・従業員に対する説明

・現地調査

本社、営業所、工場などに出向き、現地の状況を調査するとともに、場合によっては弁護士が受任した旨の公示書を貼ります。

・従業員への説明

従業員に対して、破産申立てに至った理由を説明し、在庫などの資産や帳簿類の保全への協力、破産管財人への協力を要請します。

給与、健康保険の切り替え、年金の処理、失業保険受給のための離職票の発行などについても、きちんと説明します。

4 受任通知の発送

以後は、弁護士が債権者との対応をすることになります。

5 お打ち合わせ②

ご依頼を受けた後、弁護士が裁判所に提出する破産申立書を作成しますが、その中で出てきた不明点の聞き取り、不足・不十分な書類の補充などのための打合せを行います。

6 賃貸物件の明け渡し

賃借物件がある場合、状況によって破産開始決定前に明渡しを行います。

7 裁判所に対する破産申立書の提出

裁判所に対して、破産申立書を提出します。

※ なお、上記3~6を行わず、事前に裁判所と相談したうえで、申立書を裁判所に提出する場合もあります(密行型)。

  上記3~6を行うのは、オープン型と言って、すでに支払いが滞納していたり、債権者が来ていたりする等の場合です。

また、当然、事案に応じて、上記3~6やそのほかの対応を、上記の順序と異なる順序で行うこともあります。

8 裁判官との面接

会社の社長、経理担当者などと弁護士が裁判所に行き、破産に至った経過、資産・負債の状況、従業員、債権者、賃借物件の状況、その他の問題点について、裁判官から質問を受けます。

この時に、裁判所に納める予納金の額も決定されます。

※開始前の面接が行われない場合もあります。

9 破産開始決定

破産開始決定がされ、破産管財人が選任されます(裁判所が選任した弁護士が破産管財人になります)。

10 破産管財人との面接

会社の社長、経理担当者などと弁護士が、破産管財人の法律事務所に行き、破産管財人から質問を受けます。

11 資産の処分・配当

破産管財人のもとで、会社の資産の換価、売掛金の回収が行われ、これを債権者に配当します。会社が、一部の債権者に不公平な弁済を行っている場合は、破産管財人がこれを取り戻します。

12 債権者集会

裁判所で債権者集会が行われ、破産管財人が、破産に至った経過、資産・負債の状況、配当の状況などを説明します。ただ、出席して説明を聞いてもあまり意味がないと考える債権者の方が多く、債権者は出席しないか、数名の出席の場合が多い印象です。

配当が終了していない場合は、さらに債権者集会が開かれる場合もあります。

配当するほどの財産がない場合、配当をしないで破産手続が終結することがあります。

13 破産終結決定

これによって、破産手続きは終了し、会社は解散となります。

※ 破産申立書を提出してから、破産終結決定までにかかる時間は、不動産の処分や売掛金の回収にかかる時間、不公平な弁済の有無、配当の有無などによって異なりますが、一般的には6ヶ月~2年程度です。

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所の特徴

開設以来、数多くの法人破産申立・破産管財事件・代表者破産に対応してきた弁護士法人グリーンリーフ法律事務所には、破産手続に精通した弁護士が数多く在籍し、また、法人破産専門チームも設置しています。

このように、弁護士法人グリーンリーフ法律事務所・法人破産専門チームの弁護士は、破産手続や代表者保証に関する法律相談を日々研究しておりますので、法人破産や代表者の債務整理に関して、自信を持って対応できます。

法人についてお悩みの経営者・代表者の方は、ぜひ、当事務所にご相談ください。

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、多数の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
社の破産においても、専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。
危機時期にも適切なアドバイスができるかと存じますので、まずは、一度お気軽にご相談ください。