紛争の内容
A社はB社長の両親が20年以上家族で経営してきた配管工事会社であるが、リーマンショック後の不景気の際、両親が所有する不動産を売却した金額を「貸付金」として会社につぎ込み、存続を図ってきた。ところが、その後、この「貸付金」を両親が放棄したため、それが税務上の利益と認定され、会社の実態に見合わない多額の税金が課される事態となった。
B社長は、2年前に両親からA社の経営を継いだが、会社資産はほとんどなく、追加の融資を受けようにも、多額の未払い税金があることがネックとなって、軒並み融資を断られてしまった。
一方の経営の方も回復せず、資金繰りがショートしたため、やむなく会社を閉じる決断をした。
A社の負債総額約2,500万円。B社長も連帯保証などで約2,000万円の負債を負っていた。
(最後に1名だけ残っていた従業員は解雇済み)
交渉・調停・訴訟などの経過
A社、B社長同時に破産を申し立てた。
管財人が、会社資産として残っていた工具類及びB社長が所有していた不動産を売却したが、幸いなことにB社長の自宅は妻の所有であったため、自宅を失わずに済んだ。
結局、各債権者の配当に回せるだけの財産は形成されず、異時廃止で手続終了。
本事例の結末
A社、B社長ともに破産手続終了。
(B社長については免責許可により、借金がゼロ円となった)
本事例に学ぶこと
本件は、会社の実態に見合わない多額の税金が課されたことがきっかけで、税金の支払いが事業を圧迫し、支払停止に追い込まれてしまった事案であった。
受任直後は、支払いを受けられないと知った債権者が社長の自宅に押しかけるなどの混乱もあったが、B社長夫婦が協力して苦しい局面を乗り越え、早期に経済的再出発を図れたことは何よりであった。
弁護士 田中智美