紛争の内容
依頼者は建設業の法人の代表者でした。法人の事業継続が事実上不可能になりながらも、法人財産を換価して負債の返済にあてたり生活にあてたりし、限界を迎えたところで破産手続きのご相談にいらっしゃいました。

交渉・調停・訴訟等の経過
法人財産は代表者個人の資産ではありませんので、代表者がこれを換価して自分の生活費に費消してしまうことは、客観的に見れば法人財産の横領となり、破産手続きのうえでは、原則として「横領した金額の全額を財団に組み入れる(破産管財人に支払う)」べきことになります。
しかし、本件では破産管財人との打合せにおいて、代表者には横領の意思はないこと、そもそも法人財産と代表者個人財産との区別をしていなかったこと、費消相当額全額を財団組入することは現在の収入状況からして事実上不可能であること、を丁寧に説明し、破産管財人の納得を得ることができました。そして、破産管財人から裁判所に説明していただき、代表者の収入状況から、実際の費消金額から一定程度減額した金額の財団組入を条件として、破産手続の終了に向けて進めていくことが認められました。

本事例の結末
代表者の収入から一定程度であっても財団組入をすることができなかったため、代表者の親族の援助を受けて財産に組み入れていただきました。そして、形成された破産財団から、可能な限りで公租公課を内容とする財団債権への按分配当をしてもらい、破産手続は終了しました。また、代表者個人の免責も認められるに至りました。

本事例に学ぶこと
丁寧な調査と説明、代表者の真摯で協力的な態度により、本件結末を迎えることができました。原理原則どおりに解決することが困難であっても、破産管財人や裁判所と協同して、事件の解決をすることができた事例となりました。

弁護士 田中智美
弁護士 平栗丈嗣