紛争の内容
美容関係の仕事をしていたAさんは、5年ほど前に、親族の勧めでエステサロンを経営する会社(B社)を立ち上げました。
しかし、コロナ禍に見舞われ、宣伝広告費にお金をかけるも思うように集客することができず、毎月のランニングコストだけで赤字の状態が続きました。
Aさんは今後も売上の回復は見込めないと判断、早期に廃業することを決意し、当事務所にお越しになりました。

交渉・調停・訴訟等の経過
B社には開業資金として金融機関から借りた約2,000万円の債務が残っていたため、破産手続きをとることにしました。
会社財産として残っていたエステ機器類については、複数業者の見積もりをとったうえで適正価格で売却し、その売却代金を裁判所予納金に充てることにしました。
一方、Aさん自身も一部の金融機関に対して連帯保証債務を負っていましたが、幸いにもまとまった個人資産があったため、破産は選択せず、金融機関と個別に交渉することで支払いを継続することとしました。

本事例の結末
B社のみ破産申し立て、無事に廃止決定をいただき終了しました。

本事例に学ぶこと
本件は、会社のみ破産手続きをとり、代表者個人は破産しないという珍しいケースでした。
「会社が破産する場合は、必ず代表者個人も同時に破産しなければならない」というわけではないのです。
逆に、債務超過である会社を放置しておきながら、代表者個人だけが破産しようとすることは、原則として認められていないので、注意が必要です。

弁護士 田中 智美